共同通信

来年1月に任期満了を迎えるNHKの松本正之会長(69)の後任に、日本ユニシス特別顧問の籾井勝人氏(70)が選出された。一部で「首相官邸の意向」とささやかれ、政権の影が見え隠れした会長交代劇。今後、公共放送と政治との距離があらためて問われそうだ。 籾井氏は三井物産出身。安倍晋三首相の財界応援団「さくら会」の重鎮で元経営委員長の 古森重隆 富士フイルムホールディングス会長と親交があり、「かねてNHK会長は外部からが望ましいと主張している古森氏が強く推したのでは」(財界関係者)。あるNHK関係者も会長交代については「政権の意向が反映された」と指摘する。 NHK会長の任命権は、報道機関の独立性を保つため経営委員会が持つ。今回の会長人事では当初、受信料値下げや人件費削減を手堅く成し遂げた松本会長の再任を支持する委員も多かった。 風向きが変わったのは、安倍首相と親しい作家 百田尚樹氏ら4人が新委員に決定した11月ごろ。「4人は官邸サイドの意向」(政府関係者)で、会長任命には委員12人のうち9人の同意が必要となるため、松本会長の再任は困難との見方が広がった。松本会長は12月5日の記者会見で突然、任期満了で退くことを表明した。 背景には、政府・自民党に原発や米軍基地問題などの報道姿勢への不満が根強く、松本会長への批判が高まっていたことがある。松本会長は退任の理由について「3年間の業績が評価されず不愉快」「官邸から交代という雑音が聞こえた」などと親しい関係者に漏らしたという。